「自分を一人の人間として価値があると思うか」 



どうしても、書いておかなければいけないと思って書きます。

中学や高校で本年度から実施されている《新しい「学びの指標」》についてです。
これは、長野県教育委員会が、〈これまで中学生・高校生の「学びの成果」は、主として試験の点数や偏差値・進学先などを他の生徒と比較して相対的に評価する傾向が強かったが、これを生徒一人ひとりの「今の状態を受け止め、受容」し、その「変容・成長」を重視するものに変える〉という趣旨から実施しているものです。
この趣旨について、自分は全面的に否定するものではありませんが、しかし、その意図とそれが実際に運用される場面との落差に、愕然としました。

実際にどう運用していくかというところには、子どもが自己評価をする「質問設定参考例」がたくさん挙げられていますが、ここに《新しい「学びの指標」》の本質が表れています。
質問例は、これからの時代に必要だとして中教審答申や教科「道徳」などが求める、「つけたい学力」と「つけたい人間性」のいくつかを合わせたものとなっています。つまり、現在行われている生徒の「学力」に加え、その「人間性」まで加えて、目指す人間像に添って生徒を総体として評価しようとしているのが、《新しい「学びの指標」》なのです。
65年の「期待される人間像」に始まり、態度・意欲・興味関心をも加えた教科の評価や、教科「道徳」の評価など、人間の内面や生き方、人間性を評価することについては、その危険性や難しさについて多くが語られてきたはずなのに、です。
自分は、この指標の「案」段階のものを見る機会を得ましたが、それを見せてもらった晩は、眠れませんでした。どうしてこんな案が出てくるのだろう、しかも、現場の先生などが策定委員として入っているのに。そう思うと残念で、悔しくてなりませんでした。
「案」には、ものすごく衝撃的な「評価内容(質問)例」がありました。「自分を一人の人間として価値があると思うか」という問いです。呆れました。こんな傲慢な問いを子どもに向けることのできる者はどういう神経をしているのだろう、この問いを問う者は、自分を「人間として価値がある」と思っているのだろうか、その厚顔無礼・傲岸不遜に、心底呆れました。
今、自分は時々、不登校の子どもたちの居場所である「はぐルッポ」というところに出かけていますが、そこに来る子の中には、自傷行為を繰り返す子どもがいます。こんな自分を殺してほしいと親に訴える子もいました。そういう子どもたちに、こんな問いを問うことができるか。
この問いは、さすがに成案となったものからは、削除されました。
しかし、疾風怒濤とされる青春時代を一生懸命に生きようとしている生徒たちの現在に少しも心を寄せることなく、ただ、一定の価値観に基づいてその人間性を評価しようとする本質は、「成案」となっても少しも変わっていません。
たとえば、質問項目には、「自分は責任がある社会の一員だと思うか」というような「社会貢献への能動性」を問うものもあります。しかし、この全く反論の余地のないように見える命題が、実はどんなに危険であるかを、自分たちは過去の歴史から学んできたのではないでしょうか。また、「社会をよくする」「社会の役に立つ」という考え方が、即「役に立たない」とされる人間の排除につながっていく恐ろしさをも十分知っているはずです。例えば、津久井やまゆり園事件です。

そもそも、人間性にかかわる命題は、一問一答で答えるようなことにはなじまないものです。
それらは、子どもたちの日々の行動や言動、心の動きに応じて、具体的に、その時その場で、子どもと先生や親などとの暖かな心の触れ合いの中でこそ問われるべきことです。
行政や、学校や先生、親ももちろんですが、人は、子どもたちにあるべき人間像を求めてはいけない、と思いますし、また求めてできることでもないと思います。どういう人間になりたいか、それは、子ども自身が自分で決定することです。
それなのに、今また、《新しい「学びの指標」》は、これまでのいわゆる「学力」の評価に「人間性」まで加えて、生徒を丸ごと評価しようとしています。目の前に「理想的な人間像」という人参をぶら下げて子どもたちを追い立て、その全生活を徹底的に管理しようとしています。

思うに、教育は、「改革」という名を重ねる度に、子どもに対する対症療法的な指導を加速させ、「過剰な教育」をシャワーのように降り注いできました。その結果、子どもたちは、いつも、「いいか」「わるいか」judgeされ、いつも、「であるべきだ」「でなければいけない」と駆り立てられています。そして、不幸なことに、多くの子どもたちは、それを無意識のうちに内面化して、強い同調圧力の中で過剰なほど適応しようとしながら、適応できない自分に肯定感を持てないでいるのです。
大人は、自分の考える理想の人間像を子どもにお説教するのではなく、いい環境、いい素材を子どもの周りに並べておくだけでいい。そのようにして、子どもたちに「子どもの時間」をたっぷり保障しながら、彼らが自ら育む「根っこ」から、確かなものが生きいきと伸びてくる、それを大人は、待っていればいいのです。
「案」を見せてもらった晩の、悔しさ、無念さをいつまでも忘れないでいたい、そう思っています。

老いの繰り言 2022.3

はぐまつBlock
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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (2件)

  • 初コメです。ご意見に賛同です。

    子どもは「無条件に存在していいんだ」と思って欲しいです。
    この質問項目だと、「人間性が良い=社会に貢献する=自分に価値がある」と認識してしまう子どもが増えてしまうと思います。

  • コメントありがとうございました。
    人は、病気にもなるし、交通事故にも遭います。また年も取ります。
    そして、たとえ何かの役に立たなくなっても みんなで助け合える社会になるといいですね。
      

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